こんばんは、ドクトルです。
訪問歯科の仕事の一つとして、ミールラウンド(食事場面観察)があります。
近年の考え方として、食べるという機能はお口の機能にも密接に関わっている、ということから摂食・嚥下の分野に歯科も関与できるようになりました。
ミールラウンドをしていると、「食事が進まない」という場面に時々出くわします。
というわけで、今回のテーマは「施設入居者の方々の食事が進まない理由について、ミールラウンドの体験を通じて私独自の見解で考察してみた。」です。
この記事がオススメな方 ⏩介護をされている方々、自分が作った食事を食べてもらえずお困りの方々。
①そもそも噛めない
まず一つは「そもそも噛めない」です。
噛めない原因は以下が考えられます。
- 奥歯がない
- 入れ歯が合ってない
- 病気によって噛む動作がしにくくなる
奥歯がない、は容易に想像できるかと思います。
しかし二つ目の入れ歯が合ってない、というのは意外と見落とされてると感じます。
特に多いのが部分入れ歯です。入れ歯を引っ掛ける歯がいつの間にか脱落しており、とても使える状態でないことがよくあります。この状況を、職員、身内の方々にお伝えすると
嘘でしょ!?
全く気づきませんでした、、、、
と、よく驚かれるものです。
そして3つ目についてですが、これは脳血管疾患(脳梗塞など)の後遺症、パーキンソン病、ALS、認知症などの進行性疾患で見られる現象です。
※進行性疾患とは
経過を辿るにつれ、徐々に身体機能が悪化していく病気です
②なかなか飲みこめない
次に「なかなか飲み込めない」です。
考えられる原因は以下があります。
- 進行性疾患によっての機能低下
- 食事時の姿勢が悪い
- 覚醒状態が悪い
姿勢の悪さは嚥下に影響する、という内容はこちらの記事に載せていますのでご覧ください⏬⏬
姿勢と嚥下の関係については、詳細を話し出すと物凄く長くなるので
どこかのタイミングで新たに記事を作ろうと考えてますm(_ _)m
で、この3つ目の覚醒状態が悪いというのも目にします。中でも良くあるのが
パーキンソン病の方で薬が効いておらずオフの状態になっている、また睡眠導入剤、抗精神病薬(リスペリドンなど)の副作用による過鎮静です。
というように、薬一つでも状態がガラリと変わることがあるので、服薬歴には注意してます。
③重度認知症の症状(拒否、食事に集中できないなど)
そして次は、「重度認知症の症状によるもの」です。
症状と一口に言っても、様々あるのですが、私がよく見るのは
- 落ち着かない(注意障害)
- 食事の拒否
です。
注意障害とは、例えばテーブルクロスの模様が気になって集中できない。テレビが気になって集中できない、周りの人間がいて集中できない、などです。
対応法としては、その方が気になる情報を一切遮断することです。
そしてもう一つが、食事の拒否です。
これは本当に難しい問題だと思います。
介助する職員が嫌なのか、空腹でないのか、味が好みでないから嫌なのか、多くの原因が考えられます。そのため対応法と言っても、これが正解とはなかなか言い切れないと思います。
自分が経験した一例を紹介させていただきますと
- 一口サイズのおにぎり状にして、食具を使わず食べれるようにした
- 味の嗜好を合わせた(濃くする、甘くするなど)
味の嗜好に合わせた、というやり方は正直エビデンスはありませんが、手で食べれるようにしたという方法は以下の書籍を参考にして取り入れました。
失行により、それまでできていたスプーンや箸の使い方がわからなかったり、巧緻性の低下により手先の細かい動作がうまくできなかったりするかもしれません。
そのような時は、おにぎりやサンドイッチなど、手に持って食べられるように食事の形態を工夫すると良いでしょう。
イラストで学ぶ認知症の人の生活支援より
認知症についての過去記事もあるので、宜しければご参照ください⏬⏬
④そもそもお腹が減っていない
そして最後は、「そもそもお腹が減っていない」です。
これについてはエビデンスがあるわけではなく、完全に自分の体感としてのものなのでご了承ください。
これはとある入居者の方が仰られてたことなのですが
普段外にもあまり出れないし、リハビリの時間も短いし、
そもそも歩けないから、体が訛って仕方がない。
ほとんど動いていないようなもんだから、お腹も減らないんだよね。
これには、結構納得がいきました。というか、至極当然だと思いました。
もしかしたら拒否のある認知症の方でも、言葉に出せないだけで、こういった思いを持っているかもしれませんね。推測に過ぎませんが。
まとめ
食事が進まない原因について、以上4点に絞って考察してみました。
食事に関して困っている介護の方々で、少しでも情報の一助となれば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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