こんばんは、ドクトルです。
このブログでは、皆様に役立つであろう歯科の知識を、論文紹介を交えてお伝えしています。
要点はマーカーで引いておりますので、その部分を読むだけでも内容はご理解いただけるかと思います。
さて、本日のテーマは「パタカラ体操」についてです。
介護関係に従事されている方々には、馴染みがあると思いますが、これ何となくやっている方いらっしゃいませんか?
前置きは手短にして、早速本題にりましょう。
はじめに
タイトルにある「舌口唇機能訓練」とは、所謂「パタカラ体操」のことを指します。
では、この「パタカラ体操」とは何なのかを簡単にご説明します。
パタカラ体操とは?
「パタカラ」体操とは、オーラルフレイル(口腔機能低下症)予防、誤嚥予防として高齢者の方々を対象に行われている口腔体操のことです。
「ぱ」「た」「か」「ら」の発音により、お口周りのリハビリをします。
「パタカラ体操」を勧めている背景について〜口腔機能低下症の増加
この「パタカラ体操」を勧めている背景については、以下が挙げられます。
- 食べる、飲み込むという、お口の機能の重要性が認識されるようになった
- お口の機能低下、即ちオーラルフレイルが全身の健康状態との関連性が認識されるようになった
- お口の状態が悪いと、認知機能低下につながることが認識されるようになった
要は、「お口の機能が落ちることも身体に悪い」ということなので「パタカラ体操」をしてお口周りの筋トレを頑張りましょう!という運びになりました。
しかしながら、実際のところ、この「パタカラ体操」による認知機能や口腔周囲筋力への具体的な効果は明確にされていないとのことだった為、今回の論文では具体的な効果について調査されてます。
では、具体的な調査内容を見ていきましょう。
①研究対象者
本論文での研究対象者は、特養、及びケアハウスに入居中で意思疎通が可能な高齢者60名。
なお、属性については以下表にて掲載しておきます。
②調査方法
調査方法は以下の通りです。
- 舌口唇機能訓練群をT群、訓練をしない群をN群とした。各々30名ずつ。
- T群では、食前に舌の出し入れを3回、「パタカ」を5秒連呼の訓練を行った。
- 認知機能、口腔浸潤度、舌口唇運動機能、舌筋力、口唇閉鎖力をこの順番で毎回13時に計測。
この5項目を3ヶ月毎に21ヶ月目まで測定し、データ解析を行った。
③結果
それでは結果です。
両群にて、特に差が出た項目は….「舌筋力」
グラフを示します⏬(米印のマークが付いている部分がT群有意の箇所です)
舌筋力については9ヶ月目以降、ずっとT群が有意でした。
なお、その他の項目も差は多少あったのですが、今回は特に「差が顕著に目立って分かりやすい」項目のみ掲載しました。
まとめ〜堀ちえみさんのお話も交えて
では、まとめです。
「パタカラ体操」は舌の筋トレとして最適であることが示唆される。
過去記事に何度も書いてますが、お口から食べる時に要となるのが「舌の働き」です。舌の力が弱いと、お食事を喉に送り込めず飲み込めなくなります。
この「舌」を鍛え、お口から食事をする機能を維持するということにおいて、「パタカラ」体操はたいへん重要と言えます。
少し話が逸れますが、先週幕張メッセにて学会に参加した際、特別講演にて堀ちえみさんが講師として来場され、舌ガンの体験談について語ってくださいました。
舌を6割切除し、話すどころか、食べることさえも相当苦労したそうですが、毎日お口のリハビリを行い何とか喋れる状態にまで持っていけたとのことでした。(当時の会場↓)
その時に仰っていたのが(以下自分のメモ書きのママ)
- ブツブツ独り言でも良いから言葉を喋る。1日3分でも良いので毎日やる。
- 舌を思いっきり前に出して、舌根を鍛える
- 家事をしながらでも、タッピング、リッピング(唇ブルブル震わせる)をする
- 最初はぎこちなくても、1時間喋っていると発語がスムーズになってくる。
この時かなり後方の席で聴いていたのですが、普通に聴き取れました。
話が大分ずれましたが、私が思ったのは
”失った機能を回復させるには、これぐらいの毎日のリハの積み重ね、そして継続する根気が必要”
ということです。
週1の訪問口腔リハで満足するのではなくて、自力で毎日継続するぐらいの覚悟がないと、やはり現状は変わらないということです。
この堀ちえみさんの話が、高齢者の口腔機能訓練と重なる部分を感じたので、ご紹介させていただきました。
ちなみに来年2月に東京にてライブ開催するそうで、それを目標に日々奮闘しているとのことでした!
⏩参考記事:堀ちえみ、舌がん乗り越え社会復帰に涙「人生捨てたもんじゃない」 記者ももらい泣き
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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