認知症患者転倒により重度障害〜兵庫県立西宮病院での裁判判決にて思うこと

時事ネタ
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ドクトル
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こんにちは、ドクトルです。

このブログでは、皆様に役立つ歯科の知識を、論文紹介を交えてお伝えしています。

要点はマーカーで引いておりますので、その部分を読むだけでも内容はご理解いただけるかと思います。

昨日Twitterにて、とあるニュースが話題になっていました。

今回はいつもの論文紹介でなく、こちらのニュースについて思うところを綴っていきます。

兵庫県立西宮病院での事の経緯について

まず始めに、今回の事故現場となった兵庫県立西宮病院での事の経緯について簡潔に記していきます。

2016年 認知症患者の転倒事故あり

事の発端は、認知症患者男性(当時87歳)の廊下での転倒です。

当時(2016年4月2日)の状況については以下の通りです。

  • 早朝、看護師付き添いのもと、トイレに入る
  • 男性が用を足している間に、別室患者に呼び出され排便介助に追われる
  • その間に、男性は自力でトイレを離れ廊下を一人で歩きだした
  • 転倒してしまい、不幸にも外傷性くも膜下出血と頭蓋骨骨折の大怪我を負った

男性家族が県を訴訟

この事態に対し、家族側は県に対し訴訟を起こしました。

家族側と県側の主張については以下の通りです。

家族側
家族側

大怪我のせいで寝たきりになった。

どうしてくれるんだ。

県

別室患者は感染症に罹患していた。

排便介助は急を要するのでやむを得ないものである。

結果:高松宏之裁判長により県側に約532万円の賠償命令の判決が下る

裁判の結果、県側に約532万円の損害賠償の支払いが命じられました。

判決理由は以下の通りです。

  • 転倒については十分に予測できたことである
  • 別室患者の排便についてはオムツで対応できたはず。緊急にて対応するほどでもない。

判決について思うこと

この判決について、私ドクトルが思うところを記していきます。

感想は大きく分けて3つあります。

  • 病院側の体制は考慮されなかったのか?
  • トイレをオムツで対応しろというのは倫理的に大丈夫なのか?
  • もし別室患者が同じく転倒しそうになってた場合は?

病院側の体制は考慮されなかったのか?

まず1点目。「病院側の体制は考慮されなかったのか?」

周知の通り、全てとは断言できませんが、多くの病院が看護師不足の現状に置かれています。

自分も去年入院していたので、少しは客観的に捉えているつもりですが、とても1対1対応なんて出来ませんよ。

一度に何箇所もナースコール鳴るわ、情緒不安定な高齢者の話も付き添わなければならないわ….

批判覚悟の上で言いますが、正直こういった体制では多少の迂闊さが出るのも、やむを得ないのではないでしょうか。

トイレをオムツで対応させることに対しての倫理的配慮について

そして2点目は「トイレをオムツで対応しろというのは倫理的に大丈夫なのか?」

今回の判決を聞くに、「人手が足りなければオムツで対応すればいいでしょ」というようにも聞こえました。穿った見方かもしれませんが。

排泄一つにしても、人間誰しも尊厳とプライドはあります。

地に足をつけ、便座に座り用を足す。

こういった、人として当たり前のことが出来ないもどかしさ、辛さは筆舌に尽くし難いことです。

排泄に限らず、歩行、食事などでもそうです。

やむを得ないケースもありますが、「オムツで対応しろ」の一言は少々乱暴な感じを受けました。

もし別室患者が同様に転倒しそうになってた場合は?

そして最後3点目。「もし別室患者が同様に転倒しそうになってた場合は?」

今回の判決は、排便という場面に対してオムツで対応しろ、ということでしたけども、ではこの認知症の男性と同じく、歩行してて転倒しそうな場面であったらどういう判決を下していたのだろうか?と思いました。

別室患者を助けている間に、転倒された場合も同じ過失に問われるのでしょうか?「十分に予測」した上で行なっても?

認知症に限らず、高齢者全般は転倒のリスクが付き纏います。医療現場のプロは重々承知してます。

しかし予測してても、防げる体制が無ければ、防げるものも防げません。

まとめ〜ひろゆき氏が言うように「認知症患者はベッドに縛りつけろ」という理屈が正しいのか?

まだ色々と思うところはありますが、今回の判決については、医療現場の体制面と患者さんへの倫的配慮が欠けている残念なものだと感じました。

倫理的側面を無視してでも、安全第一にしろというのであれば、かのひろゆき氏が言うように「認知症患者はベッドに縛り付けて動けなくするのが正解ということですね」という理屈が通りかねません。

今回の事例によって、「院内の事故は全て病院の責任」という概念が作り出されないことを切に祈ります。

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ここまで読んでいただきありがとうございました。

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