こんばんは、ドクトルです。
我々は食事をする際に、食べ物を噛むという作業を無意識にしています。
本日はこの「咬合」が栄養状態、運動機能、認知機能にどういう影響を及ぼすか、ということについて論文紹介を交えながらお伝えしていきます。

今回ご紹介する論文はこちらです。
なお今回の論文では、高齢者の咬合と栄養摂取、運動機能、認知機能に与える影響についての既出のエビデンスの紹介と、池邉先生が行った研究結果についての内容構成になってます。
それでは本題に入りましょう。
①咬合と栄養摂取について
先ず、咬合と栄養摂取の既出エビデンスについて記載していきます。
詳細まで書き出すと物凄く長くなるので、申し訳ないですが結果のみ記載していきます。
- 歯が少ない人の方が循環器系疾患での死亡率が高かった。
- 無歯顎者(歯が全く無い人)は野菜や果物、食物繊維、カロテン、ビタミンC、不飽和脂肪酸の摂取量がかなり少なかったが、飽和脂肪酸、コレステロールの摂取量はかなり多かった。
- 歯数の減少に伴い、野菜の摂取量が減少。結果、循環器系疾患の予防に重要な、抗酸化ビタミンや食物繊維などの栄養素が不足した。
- 歯の状態が悪いと、脂っこい高カロリーのものばかり摂取する傾向にあり肥満が多かった。
上記のように、歯の本数が少ない人ほど、野菜などのビタミンが不足する傾向にあり、循環器系疾患での死亡率が高いということが分かっています。
それでは次に、本研究結果を記載します。

本研究では、70歳1000名、80歳1000名、90歳300名の一般住民を対象に3年毎に調査したとのことです。
- 70歳1000名の群を見てみると、咬合力(咬む力)が低いほど、緑黄色野菜、魚介類の摂取が少なく、抗酸化ビタミン、食物繊維などの摂取が少なくなることが分かった。
- 奥歯が無くて咬めない人ほど、動脈硬化のリスクが高い傾向にあった。

既出のエビデンスでは歯の本数と栄養摂取の関連性についてでしたが、今回の研究では、咬む力も栄養摂取に関連することが分かりました。
②咬合と運動機能について
先ず既出のエビデンスはこちらです。
- ビタミンD,E,C,葉酸の摂取量低下はフレイル(身体機能が脆弱になること)と有意に関連する
それでは、本研究はどういった結果になったのでしょうか。
- 咬合力の低下に伴い、歩行速度は低下した。
- 奥歯が無くて咬めない人ほど、歩行速度は低下した。(奥歯ある人に比べて1.5倍)

噛む力が弱い人ほど、フレイルの傾向が見られました。
③咬合と認知機能について
それでは最後に、咬合と認知機能の関連性についてです。
既出のエビデンスは以下の通りです。
- 一卵性双生児の間で、認知症になった者とそうで無い者の比較をしたところ、差があったのは歯の欠損のみであった。
- 歯数が0~9本の方は10本以上の方と比較して、認知症の発症が約2倍であった。
- 65歳以上の2500名を5年間追跡調査したところ、無歯顎者は25歯以上のものに比べて、記憶力が低下しやすい傾向にあった。
それでは本研究の結果です。なお、本研究は最大咬合力と認知機能の関連性を調査しました。
- 80歳から3年間の追跡調査で、奥歯で咬める人は25%、奥歯が無くて咬めない人は37%の割合で認知機能が低下したことが分かった。
図でまとめるとこのような流れになります⏬

まとめ
では、まとめです。
咬合力が低下すると・・・・
①ビタミン、食物繊維、タンパク質摂取量が低下し、循環器系疾患になりやすくなる傾向にある。
②歩行速度が低下し、フレイルになりやすくなる傾向がある。
③認知機能低下のスピードが速くなる傾向にある。

ただ単に歯が多く残ってれば良いということでなくて、その残っている歯が正常に咬めるかどうかも重要であるということですね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




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