こんばんは、ドクトルです。
懲りずに今回も論文紹介です。

今回ご紹介する論文は
「咀嚼機能が低下した要介護高齢者における栄養改善と義歯使用、およびきざみ食の関連について」大原 里子 高田 健人 吉池 信男 杉山 みち子則武 加奈子 礪波 健一 品田 佳世子 川口 陽子
荒木 孝二 俣木 志朗 小山 秀夫
”きざみ食”
施設では馴染みがあろうかと思います。これは、上手に噛めない人の為に、あらかじめ食事を切り刻んで噛みやすくした形態にしたものを指します。
今回は入れ歯の使用と栄養改善、またきざみ食の有効性の2点に分けて調査した研究があったのでご紹介いたします。
この記事を読んで学べること ⏩入れ歯の使用が栄養改善につながるかどうか 要介護高齢者にきざみ食は有効かどうか
それでは本題に入りましょう。
①義歯使用の関連性について 研究対象者:35施設1646名の施設入所者
まず、義歯使用と栄養改善の関連性については、35施設1646名の施設入所者を対象に200日間の調査を行いました。調査項目は以下のとうりです。
- 歯の数、義歯使用の有無とBMIの関連性
- 歯の数、義歯使用の有無と血清アルブミン値の関連性
- 歯の数、義歯使用の有無と200日後の累積死亡数を調査
※歯の数は19本以下と20本以上のグループに分けてます。

注)1646名の属性
⏩女性8割弱、平均年齢85歳前後、要介護三以上が過半数。
②きざみ食の関連性について 研究対象者:大学生112名
きざみ食との関連性については、大学生112名を研究対象としました。調査項目は以下のとうりです。
- 一口大の人参ときざみ(5mm角)の人参を弱い力で噛み砕けるか
- 一口大の人参ときざみの人参の、通常の咀嚼力ですり潰すまでの咀嚼回数を比較
※高齢者だと誤嚥リスクが高まるので、安全性を考慮して嚥下機能に問題の無い若年者を対象としたとのことです。

注)弱い力で噛む、というのは咀嚼機能が低下した高齢者のレベルを指しているとのことです。
③結果
- 歯の本数が19本以下で、義歯使用している者の方が、未使用の者よりBMI、血清アルブミン値は高かった。
- 20本以上のグループではBMI、血清アルブミン値は、義歯使用の有無に関わらず差はなかった。
- 200日までの累積死亡数は義歯未使用の方が高かった。
- 一口大、きざみ食ともに弱い力では噛み砕けなかった。
- 健常者が普通に噛んでも、一口大よりきざみ食の方が咀嚼回数は多くなった。
- きざみ食が「噛みにくい、口の中でまとまりにくい」といった意見が目立った。
まとめ

歯が20本以上の方は、そもそも咀嚼能力に問題がない方が多く義歯使用の必要性はあまり無いことが考えられます。
しかし、歯が少ない人で義歯を入れている方が栄養面、生存率も良い結果となったので義歯を入れる意味は十分にあるといえます。
一方きざみ食については、噛めない人の為に作ったはずのきざみ食が、健常者ですら、まさかの「噛みづらい、食べにくい、まとまりにくい」とう皮肉な結果になりました。
このことからきざみ食は、要介護高齢者にとって、ものすごく食べづらく、まとまらないので飲み込みにくいものとなり、あまり有効でないことが分かります。
実際、私が往診で行っている施設でも、きざみ食提供結構あります。
嚥下機能に問題がない方であれば、全然良いです。
しかし、嚥下機能が低下している入居者の食事メニューを見てみますと、
主食がペースト、副食がきざみ食、みたいな矛盾した組み合わせが多々見られます。
嚥下機能が低下した方に提供するお食事を「嚥下調整食」といいます。
そもそも嚥下調整食とは、「まとまりやすい、ベタつかない、飲み込みやすい」が前提であります。
つまり、最初からばらついている「きざみ食」は、嚥下機能低下の方にはそもそも適切でない食事であるということです。
もし提供するならば、とろみをつけるなどして、まとまりを付与する工夫が必要になります。
きざみ食は食べやすいー高齢者の方も楽に食べれる と考えるのはちょっと注意が必要であります。
なお、この論文では以下のように記されていました。
きざみ食はかみにくく、すりつぶすまでの咀嚼回数が一口大より多く、咀嚼機能低下の対策として無効であり、誤嚥のリスクを増すことが示唆された。きざみ食は量が多く見え、おいしそうに見えないこともあり、要介護高齢者の食欲にも悪影響を与え、低栄養のリスクを高める恐れもある。咀嚼機能低下が見られない場合でも、かみにくいため食べ物をすりつぶす前に嚥下して、消化器に負担を与え栄養吸収の効率が低下する可能性も考えられる。
「咀嚼機能が低下した要介護高齢者における栄養改善と義歯使用およびきざみ食の関連について」より引用
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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