こんにちは、ドクトルです。
訪問歯科をしていますと、入れ歯作製はとても多い依頼の一つであります。
そんな中で認知症の方もいらっしゃるのですが、果たして新製したところで役に立つのかどうか、と判断を迷うことは往々にしてあるわけです。
そこで今回は「認知症の人への歯科治療ガイドライン 編集:老年歯科医学会」の中身を何点か抽出しまして、入れ歯作製について、改めて考えていきたいと思います。

このガイドラインは、複数の文献を集めて作成されたものです。
この記事を読んで分かること ⏩認知症の方への歯科的対応(入れ歯編)
①認知症患者の義歯の使用が可能と判断する要因は何か
ガイドラインでは以下のように記されていました。
- 認知機能、または介護環境も含めた義歯管理能力も、義歯使用判断の要因となり得る。
- MMSE(認知度検査)のスコア14以下は使ってもらえないことが多い。
- 義歯装着の利点がリスクよりも優る場合は、前向きに検討すべき。
- 普遍的な基準は存在しないため、義歯使用可否の判断決定は困難であることも多いが、患者の意欲、家族の希望を十分に聴取し、もし作製する場合は使ってもらえないことも十分にご説明する必要がある。
- 単に認知症だからといって、義歯治療はしないということはダメ。

まとめると
判断要因は認知機能と介護環境にあると考えられる。が統一見解は存在しない。
また、認知症の方は概して義歯使用が難しい。それでも新製をご希望するのであれば、そのことを了承の上で作製するべき。
なお、エビデンスレベル(効果の強さ)はC(弱)とのことです。
②認知症患者の義歯の修理、調整は、新義歯作製よりも有効か
- 明確な根拠はない
- 中程度の認知症レベルの方達は、新義歯受容性が困難である。この点をを考慮すれば、まず既存の入れ歯の調整、修理がベター。
- やむを得ず、新義歯作製するのであれば既存の義歯の形態を少し変えたぐらいのが良い。

支持する論文が見当たらなかったため、
エビデンスレベルはD(とても弱い)とのことです。
③認知症患者の新義歯作製は、しない場合よりも摂食機能、食形態、栄養状態の維持向上に有効か
- 根拠は乏しい
- 重度認知症の方には、基本的に摂食嚥下機能、食形態、栄養状態の維持向上を目的として新義歯作製は推奨されないと考える。
- とある論文では、認知症でない、要介護高齢者を対象とした研究で、新義歯使用者の8割弱が義歯使用を継続することで、栄養改善につながったという報告もある。

認知症患者における研究文献はないとのこと。
エビデンスレベルはC(弱)。
まとめ

今回は認知症の方へのガイドラインを、入れ歯治療に限定して見直してみました。
前述したように、あまり大々的に研究がされていないというのが現状なので、判断材料は経験に委ねるしかないのかな、というのが正直なところです。
ちなみに自分の場合ですと、不穏が多い方には先ず見送ります。
少しでも口腔内環境が変わると、その変化に追いつけず、余計に不安を募らせ益々不穏になることが多いからです。
こういったリスクも踏まえて、ご家族様にはお話はします。
しかし、それでも良いので作ってくださいと言われることは多いです。理由としては、葬式の時に見栄えが悪くなるからという心配と、形見として取っておきたいという思いがあるからです。
これが正しい、悪いというのは無いのですが、正解がないので難しいですね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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