こんばんは、ドクトルです。
最近ずっと論文紹介ですが、今日も今日とて飽きもせず論文紹介です。

施設入居者の方の多くは、身体機能が低下しています。
そういった方々のお食事は、無論安全性が重視されます。しかし、この論文の冒頭に
高齢者の食事の物性に関しては誤嚥防止の観点からしか十分な関心が払われていない。
と記載されています。
安全性も重要だけど、栄養にはなっているの?ということから話は始まります。
この記事で分かること ⏩食形態が身体に与える影響について
それでは本題に入りましょう。
研究対象者:特養入所者80人
今回の研究対象者は、特養入所者80人です。(男性13人 女性67人 平均年齢88.7歳 要介護4以上が9割を占める)
なお調査項目は以下の3点です。
- 食形態(普通食、軟菜、きざみ食、ペースト食、胃ろう)
- 健康状態(要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度、既往歴、発熱、BMI、摂取カロリー量、水分摂取量、食欲、むせの頻度、Vitality index)
- 口腔状態(歯の数、義歯数、虫歯、咬み合わせの状態、舌機能)

※用語説明
認知症高齢者の日常生活自立度→ランクⅠ(正常)〜M(精神状態悪)までランク分けしている
Vitality Index(意欲の指標)→起床、意思疎通、食事、排泄、リハビリ・活動の5項目で評価
今回の論文では大きく分けて4つの研究疑問を解いています。順を追って見ていきます。
①食形態と肺炎の既往、過去3ヶ月の発熱に関連性はあるか
Ans→あった
- 普通食25人→肺炎既往あり7人(28%)発熱あり5人(20%)
- 軟菜4人→肺炎既往あり2人(50%)発熱あり1人(25%)
- きざみ食13人→肺炎既往あり4人(30.8%)発熱あり5人(38.5%)
- ペースト食22人→肺炎既往あり15人(68.2%)発熱あり12人(54.5%)
- 胃ろう16人→肺炎既往あり13人(81.3%) 発熱あり10人(62.5%)

食形態が落ちるほど、肺炎と発熱の既往が多く占めました。
②食形態と栄養状態について関連性はあるか
Ans→あった
BMI、摂取カロリー量、水分摂取量を見てみます。
- 普通食→BMI:21.5 摂取カロリー量:1320.5±231.9Kcal 水分摂取:1358ml
- 軟菜→BMI:21.7 摂取カロリー量:1127.5±251.7Kcal 水分摂取:1212.5ml
- きざみ食→BMI:19.2 摂取カロリー量:1209.2±274.9Kcal 水分摂取:1219.2ml
- ペースト食→BMI:17.3 摂取カロリー量:1193.1±188.1Kcal 水分摂取:1150ml
- 胃ろう→BMI:17.2 摂取カロリー量:809.4±153Kcal 水分摂取:613.3ml

食形態が落ちるほど、摂取カロリー量、BMIも低値を示しました。
要は栄養不足になりやすくなるということですね。
ちなみに摂取カロリー目安量は高齢であれば最低1400kcalとのことです。
(詳細は農林水産省HPより)
③食形態とむせに関連性はあるか
Ans→なかった
④普通食摂取を可能にする要因は?
Ans→Vitality Index、食欲、咬合状態

咬む為の、歯の本数も大事ですが、食を楽しむという気持ち、意欲も重要な要素になることを示唆しています。
まとめ
以下内容をまとめます。
- 安全性を考慮して、食形態を落とすのはやむを得ないことだが、その代償として栄養が十分に摂れなくなるという傾向にある。
- 摂取している食形態のレベルが低いほど、肺炎、発熱など病気にかかりやすくなり、身体が弱体化する傾向にある。
- やっぱり、何だかんだ普通食が最高
なおこの論文では、普通食について以下のとうり記しています。
普通食は咀嚼を要するので、唾液分泌を促すことにより、①免疫能力、②口腔衛生、③歯科疾患の抑制が期待される。さらに、咀嚼器官や関連筋を使うことにより④廃用性萎縮の防止・咀嚼嚥下機能の維持増進に役立つことが期待される。普通食はカロリーも高く⑤良好な栄養状態につながることが報告されている。さらには⑥色、形、味、食感を通して満足度が高く精神的な安定が得られることも報告されている。
引用元:「食形態が施設入居高齢者の健康に与える影響と関連要因」一部改変

出来る限り普通食を生涯食べ続けられるよう、寝たきりにならず健康で居続けたいものです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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